ある日、トゥールビヨンの脱進器の落書きしていたら・・こりゃぁ〜自分にも作れるかも・・・なんて大それた事を思い立ち・・作っちゃいましょ! 実験実験!!

■NAKAMURA 時計コーナー 楽しい実験工作
Tourbillon模型作成

一枚の落書きから思い立ち
1枚の落書き・・

ある日、何となく書いたトゥールビヨンの落書きを眺めていたら、ひょっとして・・・作れないかなぁ〜と・・ 店にあった古〜い『日の出』の置き時計を使って模型を作ろう!! 既存材料とにらめっこにてたら、4番車は1分で1回転するのでどうせなら見せちゃおう! トゥールビヨンにするには4番軸を逆回転させなくてはいけないし・・ちょうど良いかも逆さまに付けちゃおうか・・・簡潔化した設計をと・・

1枚の落書き



古すぎて先ずは手直し
ヒゲゼンマイ修正中
古すぎぃ〜

幸い脱進機部分のみ本体から外せて分解掃除の出来るタイプの機械なので、その部分を改造し、既存のゼンマイ2番車3番車4番車をそのまま使い、時計としても精度を保てるよう工作してみよう!
しかし、ヒゲゼンマイがぐちゃぐちゃで外して修正しましょ!




何とも荒っぽい作業ですが・・
糸鋸でギコギコ

ノコギリ〜!?で切るの? そうです!既存の4番車は1.6gなのに、4番軸からのトルクを直接重い脱進機ブロックそのものに与えなくてはならないので、いかにそのブロック質量を軽くするかが鍵になってきます!
なので、脱進機ブロックの軽量化とシンメトリーウェイトにしなくてはなりません。

糸鋸で脱進機簿ロックをギコギコ



数字の上ではわからないので実物でバランス取り
中心を出すのは難しい
重量の中心

脱進機ブロック(ガンギ・アンクル・テンプ)をセットした状態で、左の図のようにピンセットの先でテンプのホゾを通るような対角を支え宙に浮かしブロックが平行になるよう何度も何度も・・




ダイヤ砥石でコツコツバランス取り
ビューターで少しずつ

上のようにセンターを出すための作業を繰り返し、あわせて削り表面も仕上げながら微調整を続けます。本来ならCADでも使ってNC旋盤かなにかで、計算された形に作るんでしょうけど・・肝心要なところは手作業ですよ!! トゥールビヨンである本来の意味は手作りでなくては・・
でも・・根気のいる作業だ・・・(^_^;)

地味な作業の連続



4番車軸をラジコン用ベアリングを介して
4番車をいかに中心に固定するか・・
4番車を改造です

アルミのブロックはラジコン用のベアリングブロックです。重い脱進機ユニットを精度良く回転されるには絶対必要だ?既存の4番車を軸毎ベアリングブロックに通し、固定するための穴を開けました。こうすることによって比較的精度の高い軸センターが出ました。歯車から軸を外して眼鏡のツーポイント用のステンレスのネジで固定します。




アガキやガタを修正出来るように
ココがみそ

右から3番車・4番カナ・アルミジョイント・真鍮軸受け・真鍮ワッシャー・ベアリングブロック・4番車(固定)・既存のチャイム用歯車軸を加工し脱進機ユニットに固定です。アルミジョイントを付ける際に4番軸のアガキを少し持たせ、ベアリングブロックは直接軸受けに固定するのではなく中心調整の為にワッシャーで浮かせてブロック四隅のネジでテンションを掛けました。

側面からのトゥールビヨンユニット



四つ角のネジにテンション掛けながら中心だし
脱進機ユニットが高速回転
総合中心出し!

そもそもの工作作業が緻密な計算の上に成り立ってないこの工作。ひな形が無いだけに、カンとアイディアが必要です。ガタが無くスムーズに回転する中心ポイントを四隅のネジにテンションを掛けながら微調整。ある位置とテンションで回転が急にスムーズに高速になるポイントを発見!回転トルクのロスを最小限に!!




いよいよケージにテンプを乗せます
さてテンプをセットして・・

いよいよ最終段階です。チャイム付きの置き時計でしたので余計なゼンマイと歯車を取り除き、時計輪列のみ残しました。すべての部品を洗い、各部に注油を施し、テンプを乗せて動作実験です。
動くかなぁ〜・・時間精度は?・テンプの振り角は減るか増えるか・・・息を呑む瞬間です!!

テンプを乗せましょ!



受け石にテンシンが落ちた瞬間
動いたぁ!!
動きました!

テンプを乗せた瞬間動き始めました!振り角も十分で比較的力強く動いています。従来の4番のモーメントが10倍近く増えているので、当然振り角が減ると予想していたのですが、逆にガンギ車に対しての回転トルクが増大したのか、アンクルを蹴りまくってます!でもガンギのホゾやシンが心配・・ 緩急針で調整し、実用精度を出しています。




お店のオブジェに・・しかも実用精度も出てます
置き時計には要りませんが・・

そうです。そもそも姿勢差緩和の為の機構のトゥールビヨンですから、置き時計には必要ないですね。でも、私としては、理論は知っていても実際に動かす為のノウハウが欲しかったのです。
何より実際に動くトゥールビヨン機構を間近で見たかったのです。

インデックスをイラストレーターで作って・・



模型動画&製作後記
■自作トゥールビヨン模型動画(QuickTime)12Mb
■自作トゥールビヨン模型動画(RealPlayer)9Mb
■自作トゥールビヨン模型ストリーミング(QuickTimeStreamingMovie)
Illustratorでインデックスを描きました最近、本物の量産型?トゥールビヨンを積んだ非常に安価なものを目にします。本来トゥールビヨンは、手作りの部品を熟練された職人の手で組み上げられ、とても繊細で美しくデリケートな、そして高価ですがそれ以上に価値もあるものです。しかし、一つ一つの部品が非常に精度良く加工出来る今日では、熟練工の作業を数値化して制御された加工機で作れますから、調整のそこそこ要らない精密機械が量産出来るようになりました。また、それらを安く大量に流通させることも可能です。そうした本来の技術やコンセプトやポリシーが安物になってしまうのではないかが心配です。
トゥールビヨンの本来の意味は、手で作られた部品精度の誤差や組み上げられた時の癖など、時計の姿勢の差によってシンメトリーウェイトバランスではない部品が重力の影響を受け時間に誤差が出るのを如何に抑えるかで考えられた物で、近代のマシンによる切削技術をもってすれば、精度の高いシンメトリーな部品をしかも大量に作れますからトゥールビヨンは要らないと言ってもいいでしょう。ですから逆にトゥールビヨン機構を搭載した時計は完全手作りであるべきで、手間の掛かった高価な物で当然なわけです。

当店は、トゥールビヨンが搭載された超高級時計を扱える様な大きなショップではありません。
従って、私自身実際のトゥールビヨンを見たことがありません。でも、非常に美しく理に適った画期的機構であるトゥールビヨンが大好きです。是非手に取り間近で音を聞き見てみたいです。『じゃぁ〜作っちゃうか!』と思い出来たのがこのトゥールビヨン模型・・私の技量ではウォッチサイズでは未だ無理ですが、置き時計を使い、そのサイズで加工をし、一応キチッとした実用精度を出す事が出来ました。
ご来店のお客様にも実際に手を触れられる様に展示してありますし、特にお子様は興味津々で『あっ!動いてるぅ〜!!』と喜んでご覧になられています。私自身時計が好きですから、今後も色々と研究して技能向上も兼ねて『楽しい実験工作』をしていこうと思います。


中村時計店

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